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ビジネスジャーナル版リニア談合事件論

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 JR東海リニア中央新幹線建設工事をめぐってゼネコン大手4社が談合をした疑いで、東京地検特捜部が捜査を行っているが、談合を否認し、捜査のやり方に抗議した社には繰り返し強制捜査が行われるなど、その進め方がかなり気がかりだ。

検察に抗議した大成建設への再捜索
 この事件で、同特捜部が強制捜査に乗り出したのは昨年12月8日。大林組が請け負った名古屋市の非常口新設工事の入札で不正があったとして、偽計業務妨害容疑で同社の捜索を行った。「中略」

 当初は、大林組のみが談合を認めていた。しかし、今年1月18日に朝日新聞が「清水、談合認める方針」と報じ、他の報道機関も相次いで「清水建設側も東京地検特捜部と公正取引委員会の任意の聴取に談合を認めた」と伝えた。

 この時期に清水が方針変更したのは、課徴金の減免制度を意識したものだろう。

 談合やカルテルに関与した企業でも、公取委に「自首」すれば、課徴金は減免される。減額率は、「自首」がもっとも早かった社は100%で、2位が50%、3~5位が30%。早くに恭順の意を示せば、巨額が予想される課徴金がゼロ、または半分になるというのは、「自白」へのかなり強いインセンティブになる。本件での申告期限は1月22日だった。この時点で、大林と清水の2社が申告したと報じられている。

 この時期を過ぎても談合を認めていない大成と鹿島の2社は、徹底的に争う方針を固めたということだろう。それを確認したかのように特捜部は2月1日、この2社のみに独禁法違反容疑で2度目の捜索を行った。

 2月4日付産経新聞によれば、2度目の家宅捜索は会社の法務部にまで及ぶ徹底的なものだったという。その翌日、大成の弁護人が捜査のやり方について「抗議書」を特捜部に提出。それによると、特捜部の検事らは大成の役職員を社長室に呼び出して、「ふざけるな」「社長の前でも嘘をつくのか」と怒鳴りつけ、威圧的な態度で供述を迫ったという。「検察のストーリーに沿った自白を強要しようとして圧力を加えている」として、抗議書で特捜部の捜査にやり方を批判した。

「中略」

3度目の捜索に垣間見える、検察側の“意図”
 事件の詳細は、いまだ明らかでない。一般論として、罪を犯した人や組織が、責任を免れようと証拠を隠すことはある。その場合、真相解明のために、捜査機関が同じ場所に複数回捜索を行う必要が生じる場合もあるだろう。

 ただ、3度目の捜索に至る経緯には、検察側の意図が露骨に現れているように思える。加えて弁護人の抗議内容を見るにつけ、果たして東京地検特捜部は、過去の教訓を生かしているのか、かなり心配でならない。

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家宅捜索などの強制捜査は、否認している被疑者に対する強い心理的圧力、あるいは脅しにもなる。さらなる強制捜査や関係者宅への強制捜査を避けたいという思いから、意に反する供述をしたという取り調べ経験者は1人や2人ではない。また、「任意」であっても、密室での威圧的な取り調べは、捜査官への迎合を生みがちだ。事実よりも検察のストーリーに沿う供述が出来上がれば、真相解明とは遠ざかり、冤罪の原因にもなる。また、人が死に追い込まれることもある。
 たとえば、粉飾決算を問われた旧経営陣3人が最高裁で逆転無罪となった日本長期信用銀行の事件でも、「任意」の取り調べを受けていた元副頭取が自殺している。長銀最後の頭取となった鈴木恒男氏は、著書『巨大銀行の消滅』(東洋経済新報社)の中で、自身が自宅の捜索を受け、連日深夜まで「任意」の取り調べを受けた経験を書いている。

 検事は、「あなたが旧経営陣の法的責任を否認し続けるならば、すでに逮捕された3人に加えてあなたを逮捕せざるをえないことになる。それも、あなた1人ではなく、かつての同僚や部下までその範囲を広げることになる」と告げて取り調べを始めた。それでも粉飾決算を否定すると、検事は「すでに逮捕された3人を含め、みな、こちらの言うことを認めているんだ」とすごんだ。

 さらに、鈴木氏はこう書いている。

「検察のシナリオはすでに出来上がっているようで、翌日以降、検察官が私に示す調書には私が言及していないことが多く盛り込まれていた。私が繰り返し、記述内容の訂正を申し入れ、その理由を説明しても、検事はお付き合い程度にごく一部の字句を変更するだけだった」

 特捜検察に逆らうことは許されない――その強い意思表示を前にして、鈴木氏の脳裏に自殺した元副頭取のことが浮かんだ。最終的には、強硬な検事の態度に根負けして、調書に署名捺印をした。

 こうした捜査手法が厳しく問われることになったのが、厚生労働省局長だった村木厚子さんを巻き込んだ郵便不正事件だった。この事件では、偽の証明書をつくった厚労省元係長など、先に逮捕・勾留した事件関係者に対し、村木さんの関与があったようなストーリーに沿った供述を強いていた。そうしたつくられた供述に基づいて、村木さんは逮捕、起訴された。

“任意の取り調べ”の実態
 このような密室での取り調べ状況が明らかになって、取り調べを録音・録画して可視化する必要性が、多くの人に認識されることになった。強い批判を受けて、検察も特捜部などの独自捜査については、逮捕後の録音・録画を受け入れた。

 ただ、郵便不正事件で検察のストーリーに沿った虚偽の調書がつくられたのは、逮捕・勾留された被疑者だけではない。参考人として「任意」で事情聴取を受けた厚労省関係者も、事実と異なる調書を作成されている。その理由は、公判での証言で明かされた。

 村木さんの部下だった元課長補佐は、検察の筋書きに沿う事実について問われ、「そういう記憶はない」と否定すると、取り調べ検事から「他の人ははっきり覚えている」と告げられ、「(思い出すよう)1泊でも2泊でもしていくか」と身柄拘束をにおわせることを言われた。

 また、別の厚労省職員の事情聴取でも、検察側の求める供述をしないと検事は机を叩き、大声で「覚えてない、ということはないだろう。こちらにも考えがある」とすごんだ。

 逮捕後の可視化がなされても、「任意」の段階で威圧的な取り調べが放置されていれば、「任意」で虚偽の自白に追い込まれかねない。「任意」といっても、協力しなければ逮捕されるという心理的圧力のなか、強引な取り調べがあっても拒否することは容易ではなく、実際は「強制」に近い。

ニュースサイトで読む: http://biz-journal.jp/2018/02/post_22229_2.html
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 村木さんが無罪となり、大阪地検特捜部主任検事による証拠改ざんが明るみに出た後、法務大臣の諮問で「検察の在り方検討会議」がつくられ、私(江川)も委員のひとりとなった。私は、同会議における議論の中で、任意の取り調べにおいても録音を残しておくことが必要だと訴え、被疑者・参考人が自らのICレコーダー等で録音することを妨げてはいけないし、検察側も録音を残しておくことが望ましいと述べた。
 今の東京地検特捜部長である森本宏氏は、その時に事務局の一員として、検察の問題点やその対策についての私たちの議論を聞いていたはずだ。

「中略」

 後から、「言った」「言わない」の虚しい議論になったり、取り調べのやり方をめぐって問題にならないよう、今回のリニア談合疑惑のように争いのある事件は、任意聴取の段階で音声記録を残しておくべきだろう。少なくとも、捜査の対象者が録音しようとするのを妨害してはいけない。

検察取材と報道について“再検討”の成果を
 本件でもうひとつ気になるのは、マスメディアの報道ぶりだ。リニア建設で違法な談合が行われた容疑で特捜検察が捜査を行うことは大きなニュースであり、それを競って報じるのはよくわかる。ただ、検察のストーリーに立って検察情報をいち早く伝えるだけでなく、その捜査のありようを監視することもメディアの役割のはずだ。

 ところが、現実はどうか。

 新聞各紙は、検察の捜索について大きく伝えたが、弁護人の抗議とその直後にあった3度目の捜索についての報道は、対応が分かれた。抗議と3度目の捜索の両方を、2段以上の見出しを立てて報じた全国紙は、毎日、日経、産経。ところが、1月18日に社会面準トップの扱いで「清水、談合認める方針」との検察情報を報じた朝日は、抗議と3度目の捜索については、第3社会面で活字の小さな短信扱いだった。読売は、抗議も3度目の捜索も、どちらも報じていない。NHKも抗議直後に行われた3度目の捜索を伝えなかった。

 報道機関の最も大切な役割が権力の監視であることは、言を俟(ま)たない。そのためには、リアルタイムで事実をしっかり記録し、伝えることだ。村木さんの事件も含む過去の冤罪事件で、当初の捜査情報を鵜呑みにした報道の反省もあるのではないか。

 朝日新聞は、村木さんに無罪判決が出た後の紙面審議会で、編集担当が次のように述べている。

「今回の事件で、検察の信頼が揺らぎ、検察の権力性も改めて問題になり、あり方まで問われている。検察取材と報道について、再検討のきっかけとしたい」(2010年12月21日付紙面より)

「再検討」の成果が、そろそろ紙面に現れるよう期待したい。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

【追記】
 5日午前に本稿を出稿後、読売新聞は2月6日付朝刊第2社会面に、「リニア談合 地検大成を連日捜索/会社側『揺さぶりだ』」の3段見出しで、大成側の抗議と検察の捜索状況に関する記事を掲載した。それによると、抗議書提出後の3度目の捜索に入った際、検事は激高した様子で「代表役員を全員集めろ」などと迫ったという。5日も捜索は続いた。大成側の反発を伝えるとともに、社員寮から新たにリニア工事関連資料も見つかっているとし、組織的な隠蔽工作の可能性を疑う特捜部の見方も報じている。

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ICレコーダーを使って検察による不正事件はもっと増えるかもしれないな。