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高プロの自由は嘘だった!

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2回にわたり、厚生労働省リーフレット働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」(参照:厚労省)における高度プロフェッショナル制度の紹介内容を、批判的に検討してきた(参照:「厚労省の高プロ制紹介に見る欺瞞。政府は、野党の次は国民を騙しにきた」、「悪徳商法のような高プロ制紹介。厚労省が駆使した『ご飯論法』の悪質さ」)。

 

 今回は、このリーフレットにある「自由な働き方の選択肢」というときの「自由」とは何を指すのかを考えていきたい。

リーフレットには「自由」の中身なし

 

 まずリーフレットの文面を検討しよう。

 冒頭に制度の目的として、

自律的で創造的な働き方を希望する方々が、高い収入を確保しながら、「中略」本人の希望に応じた自由な働き方の選択肢を用意します。」

 とある。なかなか魅力的な制度のように見える。

 しかしそのあとの解説を読んでも、どこにも「自律的で創造的な働き方」「メリハリのある働き方」「本人の希望に応じた自由な働き方」とはどういう働き方なのかを説明した文章がない。

 これらの魅力的な言葉から想像されるのは、「働きたい時に働き、休みたい時には休む」という働き方だろう。だが、高プロそのような働き方が可能になるという説明はどこにもないのだ。

 あるのは「長時間労働を強いられないよう、以下のような手厚い仕組みを徹底します」「健康確保のための新たな規制の枠組みを設ける」「中略」」「行政の判断でこれらが広がることはありません」など、「大丈夫ですよ。心配いりませんよ」と言わんばかりの言葉ばかりだ。これではかえって「大丈夫だろうか?」と心配になるだろうから、「こんなに自由な働き方になるんですよ」と具体的かつ積極的にPRすればよいだろうに、そうしない。

 

 なぜか。そうできないからだ。「自由な働き方」とは、偽りの宣伝文句だからだ。

 

高プロの「自由」の正体。それは、経営者が深夜でも気兼ねなく働かせることができる「自由」だ | ハーバービジネスオンライン

 

確保されていない裁量性

 

 高プロ裁量労働制と異なり、働き方の裁量性は法的には確保されていない(ただし、検討中の省令・指針で一定の裁量性が確保される可能性はある)。

 裁量労働制の場合は労働基準法の規定において、時間配分の指示をしないこととすることが次のように明記されている。

 専門業務型裁量労働制については、労基法第38条の3において、対象業務が

「業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務」

 と規定されており、

対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと

 を協定に定めなければならないことが規定されている。

「中略」

 しかし、高プロについては法律にそのような規定がないのだ。政府は

「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務」(法改正後の第42条の2第1項)

という対象業務の規定から、具体的な時間指定を受けないことが読み取れると答弁していたが、裁量労働制に関する書きぶりと比べると、到底そうは読めない。

「従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないものと認められるもの」なんて、ほとんどの仕事はそうだろう。会議資料を作成するのだって、4時間かければ2時間分の2倍のページ数が仕上がるわけではない。

 そう考えれば、ほとんどのホワイトカラーの仕事は「従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないものと認められるもの」だ。将来的にホワイトカラーの仕事を幅広く含めることができるように、このような緩い規定にしたのだろうとも考えられる。

高プロの「自由」の正体。それは、経営者が深夜でも気兼ねなく働かせることができる「自由」だ | ハーバービジネスオンライン | ページ 2

クローズアップ現代+」に隠れていたヒント

 

 それでは「自由な働き方の選択肢」というのは全くの虚偽なのか。政府は何も「自由さ」を説明していないのか。

 筆者が知る限りで、1つだけ「自由さ」が語られた国会審議がある。それは、深夜でも気兼ねなく働ける自由さ、というものだ。

 その国会審議を見る前に、前回記事でも取り上げた5月30日のNHKクローズアップ現代+「議論白熱! 働き方改革法案~最大の焦点“高プロ制度”の行方~」から、「評価分かれる“高プロ制度”」という絵解きをご覧いただきたい(参照:NHKによる番組の文字起こし)。「中略」

証券アナリストのAさんの4コマイラストには、こう描かれている。

(1)パソコンに向かうAさん。上司が「早く帰れよ!」と圧力。Aさんは「まだ仕事したいのに・・・」と焦っている。
(2)高プロの適用対象者となったAさん。焦る必要もなく、余裕の表情で集中してパソコンに向かっている。「やりたい時 仕事」と説明の文字。
(3)家で赤ちゃんを抱っこするAさん。「休みたい時休み」と説明の文字。
(4)スーツ姿で生き生きとした笑顔のAさん。「仕事の生産性UP!」と説明の文字。

このうち、(3)は法の規定の説明としては間違いだ。高プロでは、休みたいときに休めるわけではない。少なくとも、法規定上は、そのような自由裁量は全く保障されていない

 会社の理解があれば休みたい時に休めるのだろうが、それは、高プロでなくても今でもできることだ。労基法は1日8時間働かなければいけないと労働者に求めているわけではない。1日8時間を超えて働かせてはならないと使用者を縛っているだけだ。

 ここで注目したいのは、(1)と(2)のオフィスにある時計の針だ。(1)の時計は9時を指している。夜の9時で帰宅を促されているのだろう。その次の(2)の時計の針は、よく見ると1時だ。

 一方の高プロ疲労困憊しているBさんのイラストでは、1番目の時計が10時で2番目の時計が2時だ。これは夜の10時と深夜の2時だろう。

 ではAさんの(2)の1時は昼の1時だろうか、それとも深夜の1時だろうか?オフィスの背景が明るいので深夜であることはイメージしにくいが、文脈的には深夜の1時だろう。「早く帰れよ!」と言われなくなったので、「まだ仕事したいのに・・・」と思っていたAさんは、気兼ねなく深夜の1時に仕事ができるようになったというわけだ。

 しかし深夜の1時だ。そんな時間に、余裕の表情で集中して働き続けられるのだろうか? このNHKのイラストは、どうも政府に「忖度」したイラストのように思えてならない。高プロの「自由」の正体。それは、経営者が深夜でも気兼ねなく働かせることができる「自由」だ | ハーバービジネスオンライン | ページ 3

 

深夜でも働かせたい経営者

 

 無理やり「自由な働き方」にこじつけられた上記のような説明を離れて経営者の意向を率直に見てみれば、それは深夜に割増賃金なしに働かせることができる「自由」を、高プロ適用によって経営者が享受できる、ということだ。

 そのような経営上の自由さを得たいという意向は、働き方改革の法案要綱が固まる前の2017年7月の時点では日本経済新聞で率直に語られていた。例えば次の通りだ(なお、記事にある「脱時間給」とは、高度プロフェッショナル制度のことで、日本経済新聞による独特の呼び方である)。

“政府は2015年4月、脱時間給の導入案を持った労基法改正案を国会に提出。コンサルタントらに柔軟な働き方を促し、成果が出れば1日2時間勤務を認めたり、逆に繁忙期に深夜作業できたりする制度の実現を検討してきた。働き手の裁量を増やし、企業の生産性を高める狙いだ。”(出典:日本経済新聞2017年7月11日「『脱時間給』法案を修正 連合と調整、制度化へ前進」

“今回の制度が導入されると具体的にどんな影響が出るのか。例えば、経営戦略コンサルタントは日々の決められた仕事ではなく、社内チームで取り組む数カ月のプロジェクトを基本に仕事をすることがことが多い。繁忙期であるプロジェクト期間は夜通し仕事し、プロジェクトが終われば長期休暇を取ることも可能だ。”(出典:日本経済新聞2017年7月25日「『脱時間給』で綱引き 政労使、調整急ぐ」

 どちらの記事でも深夜の勤務が取り上げられている。前の表に示したように、高プロだと深夜割増の支払いが不要になるからだ。「中略」

そしてどちらの記事でも深夜の勤務について「繁忙期」という表現があるのが注目される。「繁忙期」とはつまり、業務の必要性だ。「クローズアップ現代+」の絵解きに描かれていたように、個人が「やりたい時 仕事」と選ぶものではない。

 また、高プロの省令・指針の内容を検討する労政審としては2回目の第148回労働政策審議会労働条件分科会(10月31日)(参照:配布資料)では、対象業務の素案として「金融商品の開発業務」「金融商品のディーリング業務」「アナリストの業務」「コンサルタントの業務」「研究開発業務」の5業務が事務局より提示されたが(参照:資料No.2)、この労政審の場で経営側の委員からは、

「金融はグローバルな視点から、より柔軟な時間法制が必要だ」

 との意見が出たという(参照:日本経済新聞2018年10月31日「脱時間給、厚労省が対象5業務を提示」

 この「金融」「グローバル」についても、グローバルな金融市場に対応するには深夜の業務が必要、という事情が念頭に置かれているのではないだろうか。

 これらを見れば、実際には高プロ経営者の意向で導入が求められたものであり、労働者のニーズに基づくというのは嘘の理屈付けだったと言わざるを得ない。高プロ「自由な働き方の選択肢」だというのも、やはり嘘の説明だ。深夜に働きたい人が、深夜割増を嫌がる使用者のプレッシャーなしに働けるという無理な理屈付けも、やはり嘘の説明だ。

 実際には、深夜割増を支払わずに深夜にも働かせたい、そういう話だ。

 そういう話だという「ぶっちゃけ」が言えないために、悪徳商法のような高プロ説明のリーフレット厚労省が用意したというのが、ことの顛末だ。

 さて、皆さん、これを黙って見てますか?

高プロの「自由」の正体。それは、経営者が深夜でも気兼ねなく働かせることができる「自由」だ | ハーバービジネスオンライン | ページ 5

 

 

黙ってみてるやつは政府の犬決定だ!経営者の犬だ!”!