3月22日午後5時半、東京都議会場前の道路では、この日都議会の警察・消防委員会で可決された東京都迷惑防止条例の「改正」案に反対する人たちが、抗議の声を上げていた。
「今さら小池に忖度するな!」
「賛成した議員はみんなヤメロ!」
「迷惑都知事は辞めろ!」
「賛成議員は恥を知れ!」
改正案は、29日の本会議で正式に成立する可能性が高い。彼らはなぜ、この都条例の改正に強く反対しているのか。
そもそも東京都迷惑防止条例は1962年に制定され、繁華街で迷惑行為を重ねる愚連隊などを取り締まる目的だった。それが何度か改正され、現在の条例には盗撮行為や痴漢行為も規制する内容も盛り込まれている。
「迷惑防止」を強化するのだから、都民にとって必要なことではないかと思えるが、改正内容を見ると、迷惑行為を防止するというよりは、改正案そのものが都民・市民にとって迷惑で危険な存在だとわかった。
改正ポイントは2つあり、「盗撮」と「つきまとい」の防止をさらに強化するというものだ。「中略」抗議集会に駆けつけた元日本弁護士連合会(日弁連)会長の宇都宮健児弁護士は、都条例が改悪であるというポイントを次のように指摘する。
「国会で森友問題が騒がれているタイミングで、東京都はこっそりと条例改悪しようとしています。この危険性が、国会周辺で森友問題に関して抗議する人々にも十分に伝わっていません。国会周辺のデモを取り締まりたい警察は取り締まる武器が必要であり、その武器が東京都迷惑防止条例改悪なのです」(宇都宮弁護士)
森友問題などに関して連日、国会周辺では抗議デモが続けられている。集まった人たちは、安倍晋三首相、昭恵夫人、佐川宣寿前国税庁長官、麻生太郎財務大臣など、具体的に名を挙げて厳しく批判している。
このような言動が、条例が改定されれば警察の恣意的判断で取り締まられる可能性がある。権力側から見れば、絶妙のタイミングでの「改正」だ。29日の本会議で成立すれば、7月には施行される。宇都宮弁護士はさらに続ける。
「強行成立させた特定秘密保護法、共謀罪(テロ等準備罪)と同じ威力を持つ条例改悪です。悪政を追及して正そうと批判する言論表現活動を取り締まる目的が、これらの法律や条例に共通しています。
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もうひとつのポイント、「つきまとい」に関してはどうか。
「『つきまとい(みだりにうろつく)』行為が取り締まられることは、記者の張り込み取材が規制対象になる恐れがあります。いま問題になっている森友問題で、財務省官僚の自宅周辺を張り込んだり、前国税庁長官の佐川(宣寿)さんの自宅や滞在先をうろつくことも規制される可能性があります」(同)
取材活動はもちろん、労働組合や市民運動が団交や批判の対象者がいる場所に出入りし「うろつく」ことは当然あるだろうが、このような動きもできなくなる。
委員会で反対はたった1人
さらに、取り締まり対象には、電子メールやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)での発信も含まれている。そのため、日常的に何気なく批判的な言動をアップすれば、逮捕されるおそれは十分にある。
批判内容が名誉棄損と解釈される場合が要注意だ。通常、名誉棄損は告訴するなどの行為が必要だが、改正条例案では被害者が訴えていなくても警察の判断で捜査できてしまうのだ。
つまり、捜査当局の意向でどうにでもなる、民主主義と言論表現の自由に対する時限爆弾のような都条例改悪案だ。それなのに、警察・消防委員会で反対したのは共産党の大山とも子議員ただ1人で、都議会民進党・立憲民主党、都民ファースト、自民党、公明党などは賛成した。
「中略」
「二十数年間都議会議員をしていて、皆さんからのファックスや意見など、数日間でこんなに盛り上がったことはありませんでした。都条例改定案は、『悪意ある』などと内心の問題に踏み込む内容です。悪意があるかないかを判断するのは警察です。そもそも改正する必要のある具体的事実(立法事実)があるのかと聴いたところ、警視庁は『統計がないから』と答えを避けました」(大山議員)
このように、今回の改定はまったく必要性がないと指摘した。そして大山議員は最後に「29日の本会議がある」と、世論の動向によっては本会議で否決できるとして、わずかな望みを抱いていることを明かした。
重大な懸念があるにもかかわらず、たった1時間の審議で委員会採決をしてしまうとは、都議会と都民をバカにしているとしか言いようがない。警視庁の提案どおりに改正案を都議会に提出した小池百合子都知事の目的は、不正に対して街頭で抗議する市民を“排除”することなのだろうか。
(文=林克明/ジャーナリスト)
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抗議しろ!そして希望を持て!!!!!
再録↓
国会が森友問題で注目を集める中、東京都議会の警察・消防委員会で、盗撮、ストーカーなどの"つきまとい行為"に対する規制を強化するための「迷惑防止条例」改正案が採決された。29日の本会議で可決され、今年7月から施行される見通しだという。

今回改正されるのは、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止するための条例」だ。法律で規制できない迷惑行為を取り締まるためのもので、過去には、客引き行為やダフ屋行為、押し売りの禁止など、その時々の社会背景に応じて改正を繰り返してきた。しかしネット上では"東京都版共謀罪だ"という声も上がっており、22日の採決では傍聴席から反対の声や怒号が飛び、退場者も出た。

問題とされているのは「名誉を害する事項を告げること」「住居などの付近をみだりにうろつくこと」という内容だ。個人や団体への誹謗中傷やヘイトスピーチなど「悪意」があると判断されるものが規制対象になる一方、時の政権や政治家への抗議活動や、取材活動の規制につながるのではないかと指摘されているのだ。



これについても川松氏は「まったく想定していない。政治活動や労働運動といった正当な理由がある場合には除外される。すでに16道府県で導入されていて、東京都がはじめて導入するわけでもない。どこにこの条例で行政を批判して捕まっている人がいるのか。客観的に見て危険なものを止めるということ。なんでこんな心配になっちゃうんだろうか。これからも公開の場でどんどん議論して、警視庁や我々にプレッシャーをかけていただくのがいい」と反論したが、宇都宮弁護士は「その"正当な理由"の解釈そのものを警察が判断してしまうので、縛りにならない。"デモは対象としない"くらい書かなければ濫用は防げない。2013年に特定秘密保護法ができて、昨年共謀罪法が制定された。その流れで危険性がある。集会、結社、表現の自由は民主主義社会で基本的な人権なのに、日本社会は口封じする方向に向かっている」と批判。「法律はできると一人歩きしてしまう。国旗国歌法を作るときに、当時の野中広務・自民党幹事長は"絶対に強制"しないと答弁した。ところが東京都は国歌斉唱で起立しない教師をどんどん処分していった」。

さらに宇都宮氏は、条例案の審議プロセスについても指摘する。「警察・消防委員会で19日に1時間審議して、22日も1時間だけしか審議していない。警察の説明を聞いていても、殺傷事案が起こったわけではない。なぜこの条例が必要なのか、十分な理由がないと考えられる」。川松氏は「それは論理が真反対だ。殺傷事件が起きないようにするためにルールを作ろうということ。確かに、条例案が出されて警察・消防委員会で審議した時間は1時間だが、それまでの過程の中で警視庁が各党に説明をしながら議論を積み重ねてきた。去年秋には都民からの意見募集もしているので、乱暴に扱っているということはない」と説明していた。
都条例改正案は東京都版の「共謀罪」なのか?宇都宮弁護士と自民党都議が激論! | AbemaTIMES