第二に、名護市民の中に「辺野古疲れ」が見られることである。辺野古への移設工事は大幅に遅れてはいるが、着々と進んでいる。反対派地元民の多くは高齢化し、徐々に運動から離れていった。移設反対運動を担ってきたリーダーたちの中にも、「そろそろ結着をつけて欲しい」と漏らす人も出てきたほどである。市長選と並行して行われた名護市議補選の結果も、1997年以来20年間に及ぶ辺野古移設反対運動に疲れ果てた市民の気分を象徴するものであった。反基地活動家として有名な安次富浩氏が、団体職員の無名の女性候補に大差で敗れたのである。「中略」
だが、冷静に2014年の選挙を振り返ると、稲嶺氏にとって偶然好条件がそろっていたため圧勝できたと言える。まず、自民党の候補者選びが迷走し、選挙運動に大幅に乗り遅れた一方、現職の稲嶺氏は選挙体制を早くから整えることができた。また、選挙直前に、仲井眞知事(当時)の埋め立て承認が県民の怒りに火をつけたし、公明党と維新の会も自主投票であった。しかし、今回の状況は全く異なる。
稲嶺陣営が油断した理由として各種世論調査の結果を挙げる人もいる。この数年間、どのメディアの世論調査でも、辺野古移設反対が一貫して60~70%を占めてきた。今回の選挙での出口調査でも同様の傾向が見られる。これだけ辺野古移設反対の世論があれば、辺野古という現場のある名護市の選挙では絶対勝てる、という感覚が生じてもやむを得ないかもしれない。
だが、一般に、沖縄における「基地問題」に関する世論調査や出口調査の回答拒否率はかなり高い。意見を言いにくい社会環境があるためであろう。その事実を勘案すると、得られた回答に基づく世論や情勢の分析が果たして事実を反映しているのかどうかは検討の余地がある。今回の選挙の出口調査で稲嶺氏が優勢とされたにもかかわらず、開票結果が逆になったことは、その証左である(例えば、共同通信、琉球新報、沖縄タイムス共同の投票日の出口調査では回答拒否率が49.7%に上る)。
沖縄の世論調査や出口調査の結果を分析する際に、有権者が置かれている状況を常に念頭に置く必要があるであろう。特に名護市のように、コミュニティに様々な力が作用し、激しい対立を生み、その対立が友人関係は言うに及ばず、親せき関係や家族関係まで歪めてきた地域にあっては、親しくない人間には、容易に心を開かない人が多い。それを踏まえて調査データを特別な注意を払って分析すべきである。
だが、冷静に2014年の選挙を振り返ると、稲嶺氏にとって偶然好条件がそろっていたため圧勝できたと言える。まず、自民党の候補者選びが迷走し、選挙運動に大幅に乗り遅れた一方、現職の稲嶺氏は選挙体制を早くから整えることができた。また、選挙直前に、仲井眞知事(当時)の埋め立て承認が県民の怒りに火をつけたし、公明党と維新の会も自主投票であった。しかし、今回の状況は全く異なる。
稲嶺陣営が油断した理由として各種世論調査の結果を挙げる人もいる。この数年間、どのメディアの世論調査でも、辺野古移設反対が一貫して60~70%を占めてきた。今回の選挙での出口調査でも同様の傾向が見られる。これだけ辺野古移設反対の世論があれば、辺野古という現場のある名護市の選挙では絶対勝てる、という感覚が生じてもやむを得ないかもしれない。
だが、一般に、沖縄における「基地問題」に関する世論調査や出口調査の回答拒否率はかなり高い。意見を言いにくい社会環境があるためであろう。その事実を勘案すると、得られた回答に基づく世論や情勢の分析が果たして事実を反映しているのかどうかは検討の余地がある。今回の選挙の出口調査で稲嶺氏が優勢とされたにもかかわらず、開票結果が逆になったことは、その証左である(例えば、共同通信、琉球新報、沖縄タイムス共同の投票日の出口調査では回答拒否率が49.7%に上る)。
沖縄の世論調査や出口調査の結果を分析する際に、有権者が置かれている状況を常に念頭に置く必要があるであろう。特に名護市のように、コミュニティに様々な力が作用し、激しい対立を生み、その対立が友人関係は言うに及ばず、親せき関係や家族関係まで歪めてきた地域にあっては、親しくない人間には、容易に心を開かない人が多い。それを踏まえて調査データを特別な注意を払って分析すべきである。