今国会での成立が確実視されている「水道法改正案」。さすがに、市民の生命に直結するだけに、自民や公明の内部からも反発の声が上がっている。新潟県議会では自民党議員までも水道法改正案に反対する意見書に賛同している。
法案では上下水道施設は行政が所有し、運営権を民間に委託する「コンセッション」(官民連携)方式をとるが、事実上の民間への丸投げ。現場からも厳しい声が上がっている。
「水道事業は人口減少で利益が減る一方。民間に委託したら、利益のために水道料金を上げるのは確実。結局、市民にしわ寄せがくるだけですよ」(水道事業に詳しい自治体関係者)
法案が成立すれば日本中の水道事業が海外の巨大水道会社に食い荒らされる恐れがある。すでに浜松市は昨年10月、下水道部門の運営権を水メジャーの最大手、仏ヴェオリア社を中心とする「特別目的会社」に約25億円で売却している。
水道を民営化するとどうなるのか。1997年、フィリピンのマニラでは水道料金が5倍になり、99年、アメリカのアトランタでは蛇口から茶色い水が出たという。水道料金が高騰するのも間違いないだろう。コーラより高くなるという冗談のような話まで出てきている。
「中略」。
こうした事態を受けて、世界では民営化した水道事業を再度公営化している。英国の調査機関によると、2000年からの15年間に世界37カ国で235の水道事業が再公営化された。
日本だけが十分な議論や説明もないまま民営化を進めるという異常事態。
この異様な状況について政治評論家の山口朝雄氏はこう言う。
「自分の実績づくりのために、市民の命に関わる重要な水道事業を十分な説明もないまま勝手に民営化させる。安倍独裁体制の最たるものです」
市民の命に関わる水道民営化を拙速に決めるなんて、もってのほかだ。
水道法改正案の今国会での成立が確実視 事実上の民営化で水道料金が5倍に?|ニフティニュース
安倍政権のことだ、反対無視してでも強制成立させるだろうと思う。
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国会審議はわずか7時間だけ
SPV(特定目的会社)とプロジェクトファイナンスの手法を用いるPFIは、株主配当や、資金調達のためのコストがかかり、そのために施設・サービスの利用料金や委託料が上昇した。現地の専門家のレポートによれば、英国では毎年18億ポンド(約2700億円)が水道運営会社の配当金として支払われ、また、水道運営会社の資金調達コスト(金利)は、公債の金利よりも毎年5億ポンド(約750億円)高くついているという。
つまり、英国の消費者は、公営水道が民営化されたことで、毎年23億ポンド(約3450億円)も余計に水道料金を支払わされ、それが投資家や金融機関に流れていることになる。
イギリスでPFIが進んだのは、ブレア、ブラウンの労働党政権の時代だった。EUの財政規律による制約下で短期間にインフラ整備を行おうとした結果、金融業界に取り込まれた。自治体の財源不足をPFIで克服しようとしている日本の状況に似ている。与党の中には、「日本のPFI推進は民主党時代に行われた」として、「いまさら反対するのはおかしい」という声が多いが、誰が言い出しっぺであろうと、失敗例のある政策を目をつぶって押し進めるほうがよっぽどおかしい。
日本の水道法改正の大半の内容は、水道事業の基盤強化を進めるものだ。事業の現状把握と将来予測、そして適正規模化をうながしている。そこに突如飛び込んできたコンセッション。前回の国会ではわずか7時間の審議で衆議院を通過。「長期間、民間に運営を任せることで、事業が不透明にならないか」、「サービス低下、不適切な料金値上げが起きないか」、「民間企業の倒産時や災害時の事業体制はどうするか」、「自治体に責任を残すというが、長期間民間に任せておいて、責任遂行能力は残るか」などの質問が出たが、明確な回答は得られなかった。
次期国会では他国の先例を検証しつつ、きちんとした議論が行われることを強く望む。
日本人は知らない「水道民営化の真実」フランスと英国で起きたこと(橋本 淳司) | マネー現代 | 講談社(3/3)
問題化した「水道の老朽化」が後押し。民営化で解決するのか?
あっという間に可決された「水道民営化法案」
7月5日、水道法改正法が衆議院本会議で可決されました(編注:参議院では今国会での水道法改正案成立は見送られ、第196通常国会は7月22日に閉幕しました)。これについて、週刊文春は以下のように言及しています。
W杯での日本代表の活躍に湧き、オウム真理教の松本智津夫被告ら7名の死刑執行に驚かされた7月第1週だったが、7月5日、水道事業の運営権を民間に売却できる仕組みを導入することなどが盛り込まれた水道法の改正案の採決が衆院本会議で行われ、自民・公明両党と日本維新の会と希望の党などの賛成多数で可決された。
出典:オウム死刑執行とW杯に埋もれた「水道民営化」問題の“重要発言”まとめ – 文春オンライン(2018年7月7日配信)
水道法改正案が審議入りしたのは6月27日。働き方改革関連法案に押されて審議入りは未定だったものが、6月18日に発生した大阪北部地震により21万人以上が水道の被害を受けたことで、「老朽化した水道」という問題がクローズアップされ、一気に審議入りしました。
市町村の赤字体質が「水道の老朽化」を招いた?
市町村などの水道事業者は人口減による収入減などで赤字体質のところが多く、老朽化した水道管の更新が遅れていた。
出典:同上
そもそもこれが水道法改正の背景にあるようで、老朽化した水道管更新が遅れているのは水道事業者の赤字にあるというのです。
その解決法が、民間企業参入を認めるということだと政府は考えているようです。
2013年に麻生氏が「水道民営化を目指す」と断言
水道管老朽化対策促進の名目で、市町村などが経営する原則は維持しながら民間企業に運営権を売却できる仕組み(コンセッション方式)も盛り込んだのが、今回の水道法改正になります。
国鉄、タバコ、電信、郵政と、いわゆる「三公社五現業」の民営化が続いてきました。今回は水道事業の民営化のようです。
自民党は以前から水道民営化を推進しようとしていた。麻生太郎氏による「この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します」という発言は、2013年4月にアメリカのシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)で行われた講演でのもの。麻生氏は「水道の民営化」を目指すと断言している。
出典:同上
これは、2013年4月にアメリカのシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)で行われた麻生太郎財務大臣兼副総理の講演でのものです。
明確に麻生大臣は「水道の民営化」を目指すと断言しています。
あまり報道されない「水道民営化」可決。外国では水道料金が突然5倍に | マネーボイス