Listening:<改正通信傍受法>来月施行 振り込め摘発期待、乱用懸念は消えず - 毎日新聞
犯罪捜査で電話や電子メールなどの傍受対象の犯罪を拡大した改正通信傍受法の一部が来月1日に施行される。対象犯罪が組織的な詐欺や窃盗などにも拡大され、振り込め詐欺などの摘発に効果が期待される一方、今後は立会人なしの傍受を認めることから学者や弁護士が「乱用の恐れがある」「プライバシーの侵害が拡大する」などと懸念する。【鈴木一生】
対象犯罪を拡大
改正法は、取り調べの録音・録画(可視化)の義務付けや司法取引を導入する刑事司法改革関連法の一つで今年5月に成立した。振り込め詐欺や組織的な窃盗集団、暴力団による殺傷事件など社会問題化している犯罪に対応するのが目的だ。暗号通信や情報セキュリティー技術の発達から、捜査機関の負担が大きかった手続きを見直す狙いもある。「中略」
また、通信傍受などの捜査手法を研究している井桁大介弁護士は「全体としては逸脱する傍受が行われないよう厳しく制御する仕組みになっている印象だ」としながら「仮に捜査機関から求められるままに裁判所が傍受を広く認めるようなことがあれば、組織性の要件が無実化し、一般の事件でも傍受捜査が行われるようになったり、傍受した内容が別の事件の捜査に使われたりするなど、当初の想定から逸脱した運用になる可能性が出てくる。不当な運用がされないように傍受された通信内容を精査するなどして、メディアや社会が不断に監視する必要がある」と述べた。
通知されないケース
捜査機関は、スポット傍受を実施し、犯罪関連の通信と判断した場合に限って継続して傍受できる。傍受した全内容の「原記録」と、原記録から犯罪関連以外の通信内容を消去した「傍受記録」がブルーレイディスクなどで作製される。「傍受記録」に記録された当事者に対し、捜査機関は原則30日以内に傍受の事実を通知するが、犯罪関連通信が無く原記録にのみ記録されている当事者には通知されない。
小川敏夫・民進党参院議員(元法相)は先の通常国会の参院法務委員会で「通知が行かない人がいれば、犯罪関連の通信でなくても捜査官が乱用して傍受している恐れがある。その場合の事後的なチェック体制が不十分だ」と批判した。傍受した全内容の原記録は捜査機関から裁判所に提出されて保管される。当事者は聴取・閲覧することができるが、通知がなければ傍受の事実も知らず、裁判所に原記録が保管されていること自体も分からないとの指摘だ。
当時の岩城光英法相は「傍受は厳格な要件の下で対象が決められており、いつでも犯罪関連通信が行われるという状況で行っている」と説明。そのうえで「傍受対象の通信機器の使用者は通知を受けるのが通常で、当事者が原記録をチェックすることを前提に実施しており、違法な傍受は想定できない」としている。
参院法務委は「政府が客観的に通信傍受の実施状況を検証するための方法について検討する」と付帯決議に盛り込んだ。「以下略」
通信傍受法は廃止しかない!それだけは言える