政府は、和牛や果物の遺伝資源を守るため、新法案や関係法改正案を今国会に提出し、成立を目指す。
和牛やイチゴなどの新品種は日本の知的財産である。長年の努力で品種改良を積み重ねてきた国や自治体、生産者らの努力の結晶ともいえる。
質の良い和牛が海外で生産されたり、イチゴやブドウなどの新品種が海外に流出すれば、日本の農家は大きな打撃を被る。種を盗まれた畜産農家や栽培農家にとって遅きに失した感はあろう。今後は新法の制定や関係法の改正で、知的財産の保護をより一層図りたい。「中略」
種苗法の育成者権侵害や著作権法の著作権侵害など、他の知的財産侵害への罰則と同等の罰則を科した点が特徴だ。詐欺や窃盗で取得した場合や、契約範囲を超えて輸出した場合などを差し止め請求や損害賠償の対象とした。「中略」世界と勝負するためにもブランドの保護育成は欠かせない。
で、こっちが反対論ありの社説
<地方からの問題提起>
いまの日本政府に、そんな葛藤は見られない。
2018年春、稲や麦の種子の生産を都道府県に義務付けていた種子法が廃止された。風土に合った品種を地方で独自に開発し、生産性と多様性のバランス追求を公的に支えた法律だった。
廃止理由は、民間企業の参入促進による競争力強化。公的管理がせばまることの本質的な議論はなかった。
知財保護を定める種苗法の改正にも、市民団体から反対の声が出ている。品種の知財権を強めるため、個々の農家による自主的な採種を制限しかねないからだ。
近年、遺伝子を直接改変するゲノム編集の技術などで、品種改良のペースは速まっている。多様性の行方はますます、資金力と技術力が握ることになろう。
種子法廃止後、地方では代わりに条例を設ける動きが広がり、昨年末までに15道県が制定した。
長野県の条例は今年4月に施行される。県内各地に残る伝統野菜の保護を打ち出した。種子の貯蔵も充実させていく。
遺伝資源を地域で共有財産として保存し、活用する。知財を巡る国際的な攻防と比べれば、経済的な効果はささやかかもしれない。だがその意義は大きい。
(2月2日)
社説 あすへのとびら 農業の遺伝資源 共有の財産か囲い込みか | 信濃毎日新聞[信毎web]